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「空き家」と「空室」の違い

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ランドリソースとは言葉通り「土地資源」のこと。「土地を資産から資源に変える」ために設立した「日本土地資源協会」の呼称として使っています。今年の年賀状でこの団体を「空き家の無い社会の実現を目指して」とご紹介しましたが、今世間で取りざたされている「空き家問題」に、私は憤りを感じています。それは、「空き家の定義」の曖昧さです。「空き家」とは、不動産用語の「空室」とは違います。なぜなら、「空き家対策とは、空室を埋めることではない」からです。

賃貸物件の空室が「埋まること」と、そこが「使われること」とは違うことです。賃貸物件を借りると、そこを使うことが求められるのではなく、賃料を支払うことが求められます。極端に言えば、使わなくても賃料さえ払えば問題ありません。なぜかというと、「不動産の賃貸」とは、「所有権を貸すこと」であり、借りた人は「占有できる」に過ぎないのです。

IID 世田谷ものづくり学校の校長時代、私はこのことに気づきました。

IIDは面白いテナントに入居してもらい、施設内で面白いことをしてもらうことで自らの魅力を高め、これが結果としてテナントのメリットとなっています。したがって、管理者の私の仕事は、面白い入居者を集めIIDを面白くしてもらうことです。そのため、入居者に審査の際には、入居希望者に対し「あなたがIIDに入居することによるあなた自身のメリットと、IIDのメリットを説明せよ」と求めました。これを聞くと、初めは誰もが面食らうのですが、考え始めるとやがて夢中になり面白い提案をしてくれるようになります。つまり、たとえ家賃を払っても、普段誰もいないとか、いてもこもりきりで何も発信しないようなテナントは、入居してもらう意味がないということなんです。

こうして考えると、「空き家」は「空室」ではありません。「空き家」の問題は、「賃料収入が無いこと」でなく、「誰も使い手がいないこと」なんです。空き店舗、耕作放棄地などもこれとまったく同じ問題です。このことを混同している限り、問題は解決せず、空き家は増え続けることでしょう。そこで私たちはまず、空き家をきちんと定義し、その所有者の課題を探ります。空き家をなくすためには、「空き家を空き家でなくすこと」のまえに「空き家の発生を防ぐこと」が必要だからと考えるからです。

「空き家」とは「賃料0円の土地(建物)資源」

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