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土地オーナーとして考える人が必要ということ

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日本土地資源協会の初めの仕事は「笑恵館クラブ」の事務局業務。このクラブは会員になることで笑恵館のオーナーとゆるい家族となり、この施設の活用法について共に考え、実際に居住者や利用者として関わっていく人たちのコミュニティです。従来のシェアハウスや空き家活用とは異なり、「オーナーの立場」になって参加することが目的であり特徴でもあります。笑恵館クラブをプロジェクト第1号として軌道に乗せるまでに2年かかったのは、この点を見極めるために必要な期間だったと思います。

この2年間の間に、「空き家」はすっかりメジャーな存在となり、テレビなどでも頻繁に取り上げられるようになりました。不動産・建設業界からも触手が伸びてきて、「空き家管理」という業態ができあがり、更には「空き家管理士」なる怪しい資格も登場し始めました。空き家問題を声高らかに叫んでいるのは、迷惑をこうむっているあるいは安く空き家を利用しようと企む周囲の人たちで、これから空き家の洗い出しが行われ、オーナーの洗い出しが行われ、その責任問題が問われ始めることになるでしょう。

しかし、この「オーナーが責任を問われる構造」こそがこの問題の核心です。これまでも「節税対策」を餌に散々カモにされ、アパートやマンションを建て続け、いまや供給過剰で空き室問題に悩まされる一方で、空き家を放置している張本人として指名手配されるような仕打ちを受けているのは「オーナー」です。資産を持っているがゆえに持たざる人々からは常に責めを負っています。なぜそんな目に合わなければならないのか…それは、「売却」という最後の切り札があるからです。

実は、オーナーが「売却」を考えたとき「空き家」が生まれます。売却とは、所有権を換金して土地を放棄すること、つまり、土地や家がどうなろうとどうでもいい状態になることです。たとえば、相続税を払うために換金する土地がいい例です。この土地は「いくらで売れるか」でしか語られることはありません。そして「土地オーナーは、いずれ土地を売却するものだ」と思われがちです。実際に、高額納税者のほとんどが土地成金と言われています。

しかし、土地を売却するのは全体で見ればごく一部のオーナーです。多くのオーナーは、親や先代から土地を譲り受け、それを次の世代に渡しています。「木蓮館プロジェクト」のオーナーは、「自分はオーナーというより、一時預かりをしているような気持ちだ」とおっしゃいます。この人たちにしてみれば、土地を売却・換金など、屈辱であり許しがたい行為です。相続税という制度は、はるか昔からこの国を形作って制度などではなく、ごく最近作られた一税法にすぎません。この制度が「この国をよくしてくのか」という議論をきちんとしなければいけません。

いかんいかん、つい熱くなってしまいましたが…そんなわけで実際に土地を所有しているかどうかはともかく、「土地オーナーとして考える人」が必要です。この安全で、美しく、美味しくて、快適な「日本」という資源を、自分のものとして考え、活用していく仲間を募りたいと思います。

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